NEST基地、格納庫。
 格納庫と言う名だが、実際は寮とか、宿舎とか、そのような呼び方をした方が正しいだろう。そこに「いる」のは只の車両ではなく、意思を持った生物、オートボットたちなのだから。
 普段ならば数人が賑やかに過ごしている事が多いのだが、この日はたまたま二台、いや、二人だけだった。
 よりによってこいつと二人っきりかよ。
 サイドスワイプは溜息をついた。
 目の前で笑みを浮かべているのはジョルト。別にサイドスワイプはジョルトの事が嫌いなのではない。寧ろ師と仰ぐ二人の仲が良い所為で、弟子に当たる彼らも必然的に交友関係にあった。
 でも、最近。
 サイドスワイプは少し顔を上げてジョルトのつぶらな瞳を見た。
 直後、しまった、と思う。絶対に自分にとって不利な展開が訪れるに違いない、と思って意図的に顔を直視しないようにしていたのに。
「スワイプ?」
 そう呼びかけるジョルトの声は心なしか楽しそうだった。
 ジョルトは比較的無口な方であるが、師匠のラチェット、それとサイドスワイプの前でだけは少し饒舌になる。
「あ、どうした?」
 普通通りに接すればいいんだ。サイドスワイプは自分にそう言い聞かせて答える。
「今さ、誰も他に居ないよね」屈託のない笑顔が逆に恐ろしい。「…しよ?」
 だから二人きりになるのは嫌だったんだ。そう言う代わりにサイドスワイプは顔を背ける。
「嫌とは言わせないからね」
 そう言ったジョルトの顔は笑っているが、その手には電気鞭が握られていた。
「だって誰か来るかも知れないだろ!」
「いいんじゃない?スリルがあって。それに隠すことでもないでしょ?」
「付き合ったとかどうこうは隠さなくても良いのかもしれないけど」サイドスワイプは少し後退る。「そういう事してるのは見られたらマズいだろ」
 何せジョルトの性癖は若干歪んでいるのだし。
 返事の代わりに鞭が飛んできた。
 まだ説得の余地があるかな、と思っていたサイドスワイプの読みは若干甘かったようだ。
「僕の事を拒否するの?」
 もう一度、ジョルトの鞭がサイドスワイプの体を打った。
「いいよ、スワイプは痛い目見ないと解らないみたいだから、僕もそのつもりでするから。どうせ怪我してもリペアすればいいんだもんね」
 逃げるなら今のうちだ。本気で抵抗すれば余裕で勝てるだろう。
 だが、サイドスワイプは動かなかった。動けなかったのかもしれない。
 こんな無理矢理じゃなくて、普通にしてくれたら俺だってもっと素直に受け入れてやるのにな、と思いながら。
「何なの、無反応とか面白くないし!」
 ジョルトはサイドスワイプの胸ぐらを掴んで自分の方に引き寄せた。
 そして強引にサイドスワイプの唇を奪い、舌で口腔内をまさぐる。
「…ッ…ん、んんっ…」
 サイドスワイプは喘ぎ声を抑えるのに必死で、自分の首を触る感触には鈍感になっていた。
 どうしてキスだけでこんなに気持ち良くさせるんだこいつは。これもあの大センセイに習ったのかよ。
 唇が離されるのと同時に、ぐいっと引っ張られてサイドスワイプは体のバランスを崩し、ジョルトに片手で抱きとめられる。
 一瞬経ってから、サイドスワイプは自分の置かれている状況を理解した。
 彼の首には太い首輪が巻かれていて、首輪から繋がる鎖の先をジョルトが持っている。
「ジョルトてめえ!」
「今日のスワイプ面白くないから」ジョルトは患者を手当てするのと同じような手つきでサイドスワイプの衣服を脱がしながら言う。「もしかして手足も縛って欲しかった?」
「な訳…っ…はぁっ…ねえだろ」
 鎖骨に舌を這わせられながら指先で乳首を摘まれ、思わず声を上げながらサイドスワイプは必死で反論した。
「スワイプ、可愛い。もっと声出して。いっぱい気持ち良くしてあげるから」
「声なんて出してやるかっ…や、止めろッ…っ、ひぁっ!」
 鎖を掴み、わざとじゃらじゃらと音を立てるようにしながらサイドスワイプの体を弄ぶジョルトは心底楽しそうだった。
 時折乳首を摘んだり捏ね回したりしながら上半身全体を愛撫していたジョルトの手が一箇所で止まる。
 先程鞭で傷付けた場所だ。赤く腫れて、若干血も滲んでいる。
「此処はリペアしないでおこうかな」
 くすりと笑いながらジョルトはそこを唇でなぞる。
「痛っ…」
 サイドスワイプの体がびくんと跳ねる。ジョルトはそれが面白くて、何度も舌で傷口を刺激した。
 ジョルトにとって快感を与える事と苦痛を与える事は似たようなものだったから。そしてサイドスワイプならそれを受け入れてくれると知っていたから。
「ねぇ、痛いのに、どうしてここは大きくなってるの?」
 ジョルトはサイドスワイプの下腹部をひと撫でした。
 どうして、と問われても。
「俺は被虐趣味じゃない」
「嘘だ」
 何時も性交の度に体の何処かは怪我させていると言うのに、逃げなかったのがその証拠だ、とジョルトは確信していた。
「僕にして欲しいからなんでしょ」
 今度はサイドスワイプは即答出来なかった。
 もしかしたらそうかもしれない、と少しだけ思ってしまったからだ。
 ジョルトはサイドスワイプの足を掴み股を開かせる。
「此処に僕のを入れてさ、滅茶苦茶に犯して欲しいって思ってるんでしょ」
 ジョルトは中に少しだけ指を侵入させる。
「変態だね」
「てめえに言われたくなっ…」
 反論しかけたサイドスワイプを止めるように、ジョルトは鎖を思いきり引く。その勢いで指が更に奥に入る事も勿論計算済みだ。
 そっちより前を触って欲しい、サイドスワイプはそう思ったが彼の意地でそれは言えなかった。
 当然、ジョルトは言わんとしている事は十二分に理解しているのだが、気付かないふりをして指を出し入れしている。
「や、やだっ…んんっ、はん…っ…あ…」
 最初は我慢しようと思っていた筈だったのに、サイドスワイプは快感の余りそんな事忘れて嬌声を広い格納庫に響かせていた。
 そんなサイドスワイプの姿がジョルトにとってはたまらなく愛しい。常識と照らし合わせると若干間違っているかも知れないが、ジョルトにとっては全てが純粋な愛情表現だった。

 普段は強くて、男らしくて、カッコ良いのに、僕の前だけでは可愛くなるんだから。

「ねえスワイプ、気持ちいい?」
 ジョルトの問いにサイドスワイプは思わず頷く。
「じゃ、ちょっとおあずけ」
 人が素直になったらそれかよ。
 サイドスワイプはそう言いたかったが文句を言ったらどうせまた痛めつけられるだけだろう。
「僕のもしてよ」
 ああ、そういう事か。
 サイドスワイプは苦笑しつつジョルトのものにそっと触れた。
「駄目」途端、厳しい口調で叱責される。「口も使って」
 解ったよ。サイドスワイプはジョルトの顔をじっと見て返事の代わりにする。
 男同士だから、何処をどう刺激すれば良いのかは解っている。それでもサイドスワイプは少し躊躇いの気持ちがあったらしく、そっと舌で先端に触れるだけだった。
「もっと。銜えて。奥まで」
 余り感情を込めずに、患者に接するような口調で言うジョルト。つまりそれは反論は許さないと言う態度だった。
 一度銜えてしまうと、首輪を引っ張られ髪を掴まれ、もうジョルトを満足させるまで離さない、と言う姿勢にさせられていた。
 これ、きっと傍から見たら酷い姿だ。
 サイドスワイプはそう思ったが、客観的に見た事で余計羞恥心が沸き上がってくるだけだった。
「うん、上手。ほら、もっと舌使って。……あぁ、良いよスワイプ」
 まぁ、こいつがこんだけ素直に言うなら良いか、とサイドスワイプは割り切る事にし、どう見ても主人に奉仕するような姿勢にしか見えない自分の事は深く考えない事にした。
「ぁ…凄い、良い…ねぇもっとっ…」
 なんだよ、俺こいつのこんな声初めて聞いたぞ。
 何時もは見せなかったジョルトの素直な一面にサイドスワイプは驚き、それと同時に、きっと彼にこんな事を教えたであろうラチェットに少し嫉妬した。
「あー…そのっ…んんぅ…っ!」
 気持ちいいのか?と、一旦小休止してサイドスワイプは訊こうとしたのだが、やめちゃ嫌!と言うジョルトの声と同時に髪を強く引っ張られ、無理矢理に奥まで銜えさせられる。
 苦しい。上手く呼吸が出来ない。
 涙目になりつつなんとかジョルトの方を見ると、彼は凄く恍惚とした表情をしていた。
 だがしかしそこまで我を忘れてはいなかったらしく、苦しげな表情のサイドスワイプと目が合うと一旦彼を開放した。
「ごめん」
「えっ?」
 サイドスワイプは思わず聞き返した。
「僕一人で気持ち良くなってさ、スワイプの負担考えてなかったよね」
「やめろお前らしくない、そんな台詞」
 何時も無理矢理しようとする癖に。
「でも本当気持ち良くなり過ぎてさ、おかしくなりそうだった」
 ジョルトは自分でも当惑していた。どうしてサイドスワイプにされるとこんなに気持ちいいんだろう、と。特別に人並外れて上手い訳じゃないのに。
「じゃあもうやめるか?」
 当初と立場が逆だな、と思いつつサイドスワイプは訊く。強引にされたのに。やめろと言うのは彼の方だった筈なのに。
「やめない。出るまでして」
 そう言ったジョルトの顔は何時もの彼だった。
 全くこいつはどうしてこんな可愛い顔してその性格なんだ。サイドスワイプはそう思いながら再びジョルトに奉仕を開始した。
 今度は自分のペースで。
 しろと言われたからしているに過ぎない筈だったのだが、段々彼は自分から積極的に大胆に銜えていた。
「あぁ、はぁっ…駄目気持ちいい」
 サイドスワイプは少しだけジョルトの気持ちが解った気がした。
 ジョルトは自分のものを必死で銜え、舐めているサイドスワイプを見て、綺麗だ、と思った。
 顔立ちが整っているとは前から思っていたが、こんなに真摯な表情で、僕の為にしてくれている、と思うと愛しさが増すのだった。
「ね、出る、出ちゃう。止めないで、全部飲んで」
 上擦った声でジョルトはそう言うとすぐに絶頂に達した。
 サイドスワイプは噎せながらも必死で飲み下そうとしたが、予想より多い量に少し零してしまう。
「零した。全部飲んでって言ったのに!」
 内心、口の端から白濁液を少し垂らしたサイドスワイプの紅潮した顔が凄く色っぽい、と思っていたのだが、そんな事は微塵も表に出さず、ジョルトはまたきつい口調に戻り、鞭を振るう。
「痛ぇっ…」
 前言撤回。サイドスワイプはジョルトの鞭を受けながらそう思った。やっぱり何考えてるか解らないこいつ、気持ちなんて解るか、と。
「やっぱりそうやって痛がるスワイプの方可愛いかも知れない。…ねえ、入れて欲しいんでしょ?」
「ああそうだよ!お前一人でイくなよ!」
 サイドスワイプも逆ギレ気味で答える。
「じゃあさ、四つん這いになって自分から入れて下さいって言いなよ。じゃないとしてあげないから」
 顔を間近に近付けてジョルトは言い放つ。
「…解った…」
 了承する返事は辛うじて聞こえる程の小さな声だったが、驚くほどの素直さでサイドスワイプは応じた。
 冗談で言ったのに。
 ジョルトは少し呆気に取られたが、なかなかない機会だと思ってこれを愉しむ事にした。
「もっと足開いて、お尻上げて」
 サイドスワイプの首輪を引っ張りながら命令口調でジョルトは言う。
「で、お願いは?何も言わないで黙ってても解らないんだよ?」
「入れてくれ」
「もっと丁寧に」
「入れて…下さい」
「よく出来ました」
 ジョルトは会心の笑みを浮かべてサイドスワイプの腰を抱き、彼の中に入って行った。

「「気持ちいい?」」
ほぼ同時に二人は同じ台詞を発した。
「真似すんなよ…」
「スワイプこそ」
 こうやっていれば、いわゆる「普通のカップル」の範疇に入るんだろうな、などとサイドスワイプは思う。
 そう、俺はごく普通に一緒に居たりくっついたりしてたいだけなんだよ。どうしてこうなる。そう思って、結局「ジョルトの事が好き」と言うのは肯定してると気付いて苦笑しそうになった。
「スワイプの中、すっごい気持ちいい」
 ジョルトは屈託なく笑ってサイドスワイプを背後から抱きしめる。
「なんだ、普通に出来るんじゃねえか…」
「僕は何時でも普通だよ?」
 ジョルトは首を傾げた。彼の場合、本人は常に何もおかしい事をしていないと思っているから困るのだ。
「お前もう少し常識を勉強しろ…と、言っても、まぁ仕方ないか…」
 サイドスワイプの言う「仕方ない」は「師匠があれだから仕方ない」だったのだが、ジョルトはそれに気付かないようだった。
 ジョルトは暫くの間、黙ってサイドスワイプを抱きしめて彼の体温を感じて居たのだが、やがてゆっくりと動き出した。
「んっ…」
 ジョルトの動きに合わせて、サイドスワイプの喘ぎ声が響く。
「…そんなにっ…動っ…あぅっ…駄目だっ…!」
「まだちょっとしか動いてないよ?」ジョルトの方はまだ余裕がありそうだった。「そんなに僕とするのが良いんだ。嬉しい」
 ジョルトは本当に上機嫌そうな顔をして、サイドスワイプの胸を愛撫している。
「やっ…ち、乳首…やめっ……」
「でも此処触るとね、すっごい締まるの。びくん、ってなる」
「気持ちいいから…駄目だ」
「気持ちいいのが駄目なら、どうすれば良いのさ」
 そこまで言って、ジョルトはふと思いつく。
「痛いから傷口触るなって言っただろっ!」
 そう、先程ジョルト自身がサイドスワイプに付けた鞭の痕。
「でも凄い。さっきより締め付けてくる」
 ジョルトは面白がって赤くラインを引いたかの如き傷口を触りながら激しめにサイドスワイプを突く。
「あぁっ、あっ、ひゃあ…っ…う…駄目だって…っ…ああ……ん…言ってるだろっ…」
 もう躊躇う事もせずにはしたない声をサイドスワイプは上げ続けている。
 既に快楽故か苦痛故か、その声の原因は本人にも解らなくなっていた。
「ら、らめぇっ……あっ…ジョルトやめっ…」
「今更止められると、思う?」
 ジョルトの声にも先程までの余裕はない。明らかに息が荒くなってきている。
「スワイプっ…スワイプ…!」
「ジョルトっ…」
 互いの名前を呼び、ひたすら快感に身を委ねる。
「気持ち…いい…このままイっちゃって、いい?」
「あぁ、あっ……おまっ…さっき……出した、だろ…?」
「だってスワイプの中が気持ち良すぎるから…」
「じゃあ、一緒に…な…」



「ねえスワイプ。愛してる」
 ジョルトは未だぐったりして動けないサイドスワイプに凭れ掛かった。
「…俺もだよ」
 サイドスワイプがはっきりそう言ったのは初めてだった。
「もう一回言って」
「絶対やだ」
「ケチ」ジョルトはずっと付けっぱなしだったサイドスワイプの首輪の鎖を引っ張る。「減るもんじゃないのに」
「特別なんだよ、俺のは」
「訳わかんない」
 膨れっ面をしながらもジョルトはサイドスワイプに口付ける。
 最初とは違って、慈しむように。
「解った、解ったから」
 これ以上長くキスしているとまたしたい衝動が襲ってくる。
「じゃあ言ってよ」
 癖でジョルトの片手は愛用の電気鞭を握っているが、それを構える素振りは一切なかった。
「俺も、好きだよ。ジョルト…」




発端は絵茶で描いたこれ↑
何で一番最初に描いたTFエロSSがジョルサイなんですかカスミさん。
ジョルトは無自覚ドS攻め、とか言ってた割には結構普通のエロになった気がするなー。割と幸せなえっちが好きなのでw